東欧クロアチアの超レア犬種たち

文と写真:藤田りか子

クロアチアの牧畜番犬種、トニャックが民族衣装を身につけたハンドラーに連れられドッグショーで勢揃い!

犬の取材でヨーロッパの様々な国をめぐったものだが、中でもクロアチアは好きな国の一つだ。もちろん「犬を見る」という観点で、だ。いや、風光明媚な国なので観光としても素敵なところだが、犬の取材に出かけると私は観光地訪問はほぼすっ飛ばしている。犬を見る方がより地元の人と接触できる機会が多く、その国の文化を知ることができる。観光地はどの国でもみな旅行客のために「おすまし」をしていて、結局どこも同じように見える。だが、地元の人と触れ合えたクロアチアはとても楽しかったので、2週間も滞在してしまった程だ。

ダルメシアンがクロアチア原産の犬と言われても、多くの人にはあまりピンとこないだろう。が、実はクロアチア・ケネルクラブにより「原産犬」として定められているのだ。のみならずFCIもクロアチアの犬として公認している。それはクロアチアにダルメシアン海岸という地域があるからだ。しかし、ダルメシアンはどうやらイギリスで発達した犬ではないかとこの頃の犬種歴史家は言う。個人的にもイギリス説には大賛成である。これについてはいずれの機会に詳細を記すとして、ダルメシアン以外のクロアチアに存在するレア犬種を紹介したい。

ハウンドの国、クロアチア

まずはクロアチアの位置について。イタリアの東隣にある国。面積は九州よりやや大きい程度。アドリア海に面しており、特に海岸側は世界のリゾートとして知られている。日本からもツアーがでている。が、犬好きであれば、海岸側はあまり面白くない。クロアチアの犬文化のメッカは海岸の背後を走る山岳地帯および内地にあり。原産犬種といえば狩猟犬や牧畜犬であり、当然ビーチでウロウロするはずもない犬たちばかりだ。

クロアチアの位置。首都はザグレブ。アドリア海を経てイタリアの東隣。旧ユーゴスラビアの一部だ。

日本がスピッツの国で、イギリスがテリアの国なら、クロアチアは定めしハウンドの国と呼びたい。クロアチアの原産犬は全部で6種。そのうち4種が嗅覚を活かすセントハウンド種だ。ここにダルメシアンも含まれる。出身場所によって4犬種のハウンドが存在する。いずれも見かけはイギリスのフォックスハウンド風だ(ダルメシアンは除くが)。

おなじみダルメシアンはクロアチアの南部側の海岸線、ダルメシアン海岸一帯のハウンドが起源になったと考えられている。だが前述したように、私はこの説を信じないので、これ以上記さない。どうかいずれダルメシアンはイギリスの原産犬種として認められますよう…。

北部の海岸であり半島であるイストリアという地域からは、イストリアン・ハウンドという猟犬が生まれた。コートは白がベースにオレンジの班。イストリアン・ハウンドには、スムースとワイヤードコートのバリエーションが存在する。ウサギ、キツネ、イノシシ狩りに使われ、イギリスのハウンドのようにパックではなく、単独あるいは2頭で使われる。

イストリア半島から、ザグレブに向かった内地ではポサヴァッツ・ハウンドが誕生した。赤地に白い襟、あるいは白い斑を持つコートが特徴。特にイノシシ狩が得意。吠えて止めるのがとても上手だということだ

イストリアン・ハウンド。ショートヘアード(右)とワイヤードコート(左)のバリエーションが存在する。

ポサヴァッツ・ハウンド。

牧畜犬もいる!

ダルメシアン以外のクロアチア原産犬種で国外でもっとも知られている犬はもしかして、この牧羊犬かもしれない。日本にも何頭か存在するそうだ。クロアチアン・シープドッグ。体全体はクリクリ毛におおわれているのに、頭部だけはスムースコート。カーリーコーテッドレトリーバーと同じパターンであるが耳は立ち耳。奇怪な見かけだが、クロアチアでは昔からその辺の農家や牧場にいた。国土の北東に位置するスラボニア地方がその故郷と言われている。本犬種を見てハンガリー原産のムーディを思い起こす人もいるだろう。おそらく歴史的にはほぼ同じ犬ではなかったのだろうか。ハンガリーとスラボニア地方は国境を接している。

山岳地方を訪れた時に見かけたトニャックそしてクロアチアン・シープドッグ(手前)。

そして最後に紹介する犬種。牧畜犬ファンの私としてはこの犬種は絶対に見逃すことができず。わざわざ山岳に出向いて作業犬として働いている犬に会いに行ったほどだ。トニャックという牧畜の番をする大型犬種。首都ザグレブで開催されていた大きなドッグショーにもかなりの数が出陳されていた。が、これまで地元の人や牧畜を営む農民に飼われていたこともあって、あまりショー・ブリーディングが進んでないそうだ。それだけに知らない人を怪しんで防衛しようとする気質は強い。だから、この犬種は北欧デンマークで「危険犬種リスト」に入れられている。

以上の犬種についてさらなる詳細を知りたい方は、今年出版した増補改訂最新世界の犬種図鑑に載っているのでそちらも是非参考に!ちなみにこの犬種図鑑の表紙の犬こそクロアチアン・シープドッグである。(↓)