ペットがスズメバチに刺されたらどうする?

文:サニーカミヤ


[photo from wikimedia

日本国内には、大型のスズメバチ属7種、小型のクロスズメバチ属5種、ホオナガスズメバチ属4種の3属16種が生息しているといわれています。いずれも活動期は、巣作りの始まる7月頃から10月ぐらいまでにおよびます。

日本では、年間およそ20人の方がスズメバチ被害により死亡しています。スズメバチに刺された時の痛みや腫れはハチの中でも最も激しく、毒蛇や熊による被害よりも、スズメバチの攻撃による死者のほうが多いようです。

スズメバチが恐いのは、刺すだけではなく、毒を霧のようにまき散らす攻撃もすることです。その毒が目に入れば失明することもあり、呼吸気管に入っても危険です。しかも、噴霧された毒の匂いは仲間を呼ぶ合図にもなるそうです。

また、スズメバチはミツバチと違い、毒液が続く限り何度でも刺すことができると言われています。それが集団で襲い掛かってくると、命の危険に繋がります。

巣作りの場所も地中や木の根の部分などが多いようですが、空き家や小屋などの発見が困難な場所に作られることもあり、山登りやフィールドワークの最中はもちろん、人通りの少ない神社やお寺の参道などで、うっかり巣に近づいた結果被害を受けるケースが少なくありません。

それではペットの散歩中に、どうやったらスズメバチの攻撃を免れることができるでしょうか。また、自分やペットが刺されたときにはどうしたらいいのでしょうか。ペットセーバープログラムのなかで教えている内容の一部をご紹介いたします。

まず予防法です。諸説あるようですが、海外でも言われていることは以下の通りです。

    • スズメバチに遭遇したら、建物や車、テントの中に逃げ込んで、開口部を完全に閉める
    • 犬が吠えたり、興奮してスズメバチに向かって行かないようにコントロールする
    • 落ちているスズメバチに犬が興味を持たないようにする
    • 犬がスズメバチに刺されやすい場所は鼻、口、頭、腰が多い
    • スズメバチは動物の汗の臭いに反応して襲うことがある
    • 食べ物や飲み物にも集まってくるため、いつまでも外に出しておかない
    • 手で払ったり、何かでたたき落とそうとすると返って危険
    • 走って逃げると追いかけてくることが多いため、静かにゆっくりとその場を去る
    • スズメバチは時速40kmのスピードで追いかけてくるため、走って逃げ切れない
    • 香水、香りの強いシャンプー、整髪料など匂いを発するものに寄って来ることが多い
    • 蚊よけのキャンドルや線香に集まってくることもある
    • ひらひらする服にアタックすることがある
    • 蚊を避けるための超音波発信器に反応して、攻撃してくることがある
    • 長袖と長ズボン、帽子を着用し、できる限り、肌の露出を減らすこと
    • カチカチという音を鳴らしながら近寄ってくる場合は、威嚇されている

色や匂いなどで一度刺激されたスズメバチは、警戒心がとても強くなり、仲間を集めて人を襲いやすくなります。周囲にいる人や近寄ってくるに人も注意喚起が必要です。

犬がスズメバチに刺されてしまったら・・・

それでは、犬がスズメバチに刺されてしまったらどうすればよいでしょうか。アナフィラキシーショックは突然に発症し、急速に悪化して、致死的になることもある呼吸・循環系の危機的状態です。飼い主は自分の身を守りながらも、迅速かつ適切な対応が必要となります。とにかく早く、下記の手順で、直近の獣医師の元に連れて行くことが重要です。

  1. タクシーなど動物病院までの安全な搬送手段を手配する
  2. 動物病院に電話して、カルテ番号とスズメバチに刺されて様子がおかしいことなどの状態を伝える
    ※携帯の連絡先に動物病院の名前、カルテ番号、マイクロチップの番号等を事前に登録しておきましょう
  3. タクシーが到着し、動物病院に到着して獣医師に引き渡すまで、人工呼吸や心肺蘇生法を行う

特にアナフィラキシーの主たる死因は、毒により喉の内側が腫れた状態になる気道浮腫による窒息とショックです。医療用具をまったく持っていない状態で病院に車で搬送するのであれば、家族にペットの気道確保を継続してもらうことが重要です。

また、呼吸が止まったときのために人工呼吸も知っておくと救命率が高くなります。ペットへの人工呼吸法は、

  1. ペットの喉をまっすぐにして気道を確保
  2. 舌を引き出す
  3. 両手でペットの口を閉じる
  4. ペットの鼻から、ペットの肺の大きさに応じた呼気を1秒掛けて、2回、ゆっくりと吹き込む

です。この時に換気は十分に行ってください。

注意するのは、床に寝ているペットの首を立てた状態で人工呼吸を行わないこと。必ず、施術者が床面と平行になって人工呼吸を行って下さい。ペットの首を立てた状態にすると気道が狭まってしまい、十分な人工呼吸ができません。

以下、ペットの人工呼吸法についてのポイントです。

    • ペット用酸素マスクを使用しての人工呼吸法が効果的
    • ペット用酸素マスクはバグマスク(アンビューバッグ)に取り付け可
    • ペットの肺の大きさ以上に吹き込みすぎないこと
    • ペットの鼻から息を吹き込むときに目で、ペットの胸腹部の挙上を確認すること
    • ペットの口を閉じるときには、ペットの上下の唇を合わせる感じ
    • 短頭犬種は人間の赤ちゃんと同じように喉をまっすぐにしすぎると、逆に気道を狭くしてしまう可能性がある

ペットの人工呼吸については、また別の機会に詳しくご紹介したいと思います。

■消防現場で行うペットのCPR(心肺蘇生法)について
カナダでは、消防車両にペット用の酸素吸入マスクを積載も

消防現場で行うペットのCPR(心肺蘇生法)について | ペットライフセーバーズ:助かる命を助けるために | リスク対策.com(リスク対策ドットコム) | 新建新聞社
すばらしいペットレスキューですよね!このニュースを見た多くのカナダ国民が、オーナーの留守中に発生した火災の煙で窒息した犬を消防隊が救助し、見事に蘇生させたことに感動しましたが、日本でも、多くの人がオーナーもペットも一緒に助けて欲しいという消防士への期待が強いと思います。

アメリカでは、アナフィラキシーになったペットへ、ジフェンヒドラミンが含まれる錠剤や携帯酸素ボンベによる酸素投与、人間用のエピペンを使ってアドレナリン投与することも必要に応じてアドバイスされています。

ペットがスズメバチに刺されと思ったら、短時間に次の観察処置を手際よく行います。

    • 皮膚症状の有無
    • 気道閉塞の有無
    • 循環動態(血圧・脈拍・心拍)などの異常の有無
    • 意識障害の有無
    • 消化器症状(悪心、嘔吐、下痢など)の有無

犬の場合、刺されたところを舐めようとしますが、スズメバチの神経毒は呼吸に影響を及ぼす危険がありますので、舐めさせないようにしましょう。また、スズメバチの針には、ミツバチの針ほどの返しがないため、刺された所に刺した針が残ることはありません。

特に犬の場合、毛が多いため、刺された場所を特定するのが困難ですが、皮膚が赤くなっていると思いますので、刺された皮膚から毒を絞り出すようにして、流水で洗い流します。

ハチの毒はタンパク質でできており、水に溶けやすいので、大量の水で洗い流すのが効果的です。流水がなければ、ペットボトルのお茶やその他の飲料水でも大丈夫です。とにかく早く、毒を体外へ出して、患部を冷やしましょう。

犬には使えないと思いますが、飼い主が刺されてしまった場合、ポインズンリムーバーがあれば、吸い出してから水で洗い流すという方法も有効です。


ポイズンリムーバー(↑)はネットでも購入可能。

いかがでしたか?

動物も人間も、スズメバチに限らず、ミツバチなどの蜂毒にアレルギーがあるかどうかは、海外の検査機関に出せば調べることができます。

アレルギーがある場合やアナフィラキシーのリスクがある場合は、対処療法としての「アナフィラキシー補助治療剤」の自己注射を携帯すると安心ですが、犬用のアドレナリン自己注射薬があってもいいですよね。

対処療法(自己注射薬/アナフィラキシー補助治療剤)
蜂毒アレルギーの患者さんが蜂に刺された場合におこなわれる、唯一の応急処置法。過去にアナフィラキシーを起こしたことがある場合、または、蜂刺されのリスクが高い場合は、アナフィラキシーショックの症状を緩和する補助治療剤として自己注射薬を携帯するように習慣づける。

根本的な治療法としての「減感作療法(アレルゲン特異的免疫療法)」もあるようです。

根本的治療(減感作療法/アレルゲン特異的免疫療法)
蜂毒アレルギーの原因となっているアレルゲン(蜂毒成分)を徐々に身体の中に入れて慣らしていき、過剰なアレルギー反応を抑えていく方法。注射により、定期的に少しずつ抗原の濃度、量を増やしながら治療を行う。

いずれにしても、スズメバチに限らずハチに遭遇したら、早めに見えない位置へ静かにゆっくりと移動するなどしてペットと自分の身を守りたいですね。

それでは、また。

本記事はリスク対策.comにて2018年4月25日に初出したものを一部修正し、許可を得て転載しています

文:サニー カミヤ
1962年福岡市生まれ。一般社団法人 日本防錆教育訓練センター代表理事。元福岡市消防局でレスキュー隊、国際緊急援助隊、ニューヨーク州救急隊員。消防・防災・テロ等危機管理関係幅広いジャンルで数多くのコンサルティング、講演会、ワークショップなどを行っている。2016年5月に出版された『みんなで防災アクション』は、日本全国の学校図書館、児童図書館、大学図書館などで防災教育の教本として、授業などでも活用されている。また、危機管理とBCPの専門メディア、リスク対策.com では、『ペットライフセーバーズ:助かる命を助けるために』を好評連載中。
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