見ているだけでも想像力が掻き立てられる!ノーズワークセミナー参加レポート

文と写真:尾形聡子

『庶民と庶民の犬のためのスポーツ』

ノーズワークをそう表現する、藤田りか子さんを講師に招いてのノーズワークセミナーが6月16日(2018年)に開催されました。主催は東京を中心にドッグトレーニングを行ったり、飼い主さん向けにさまざまな犬関連のセミナーを企画・開催しているScent Line(セントライン)。梅雨の合間の雨上がりの土曜、大勢の人でにぎわう吉祥寺の街を通り抜け、セミナー会場となる日本基督教団吉祥寺教会へと向かいました。

犬曰くブログで藤田さんのノーズワーク記事を熟読してきてはいたものの、実は恥ずかしながら、これまでにきちんとしたノーズワークのセミナーに参加したことがありませんでした。私自身ノーズワークをしっかりと見学するはじめての日になりました。

会場には10組の犬と飼い主さん、そしてそれ以上に大勢の見学者が。ノーズワークのトレーニングをすでに開始している方から、まったくの初心者の方、小さな犬から大きな犬まで集まっていました。

最初に藤田さんよりノーズワークについてのレクチャーがありました。2006年にアメリカで誕生したノーズワークというドッグスポーツは、今やスウェーデンのみならず世界的に大ブームとなっているそうです。ノーズワークというスポーツの特徴、競技会はどのような流れで行われ、どんなサーチがあるのか、というような全般的なお話を端的に聞くことができました。

続いて、習うより慣れろ、ということで早速トレーニング開始です。10頭の犬がかわるがわるターゲットとなるにおいを探す練習を。犬のレベルや状態に合わせてさまざまなやり方で行われました。

初心者のこちらのワンちゃんは15歳!耳が不自由でありながらも、おやつの匂いを嬉々として探していました。最初はこのようにして、いずれかの箱に置かれたおやつの匂いを嗅ぎあてるところから入っていきます。おやつのにおいを探しあてられるようになったら、実際に使うアロマのターゲット臭を箱につけ、その脇におやつを置くようにして、おやつからターゲット臭へと探すものを移行させていくようにします。

こちらは午前の部参加で一番小さかったワンちゃん。最初は緊張している様子だったものの、徐々に慣れて”匂いを探す”ことを理解していく様子を見ることができました。

瓶に入れたターゲット臭を探す練習は、最初は瓶を一つ使うところから。慣れてくれば、何もいれない瓶の数を増やし、どれに入っているかを探すようにしていきます。

ターゲットとなるにおいは床の上のみならず。三次元でにおいを探せるよう、こんなセッティングでも練習が行われました。

そして徐々にその数も増やしていきます。各セッションは短時間で、犬が飽きずに、ちょうどいいころ合いの時にサッと終わらせます。

犬に”においを探すこと”を教えるための工夫が盛りだくさんのノーズワーク。トレーニングはひとつの方法にこだわらないように、と藤田さんが話していたように、まさに人の頭もフル回転。飼い主さんの工夫、そして犬との練習の積み重ねで、チームワークが形成されていくのだということを実感しました。

“においを嗅いで何かを探す”行為は、どんな犬にも備わっている本能。そして、本能的な満足感を得られることは、犬の生活の質の向上にもつながっていきます。さらには、この“におい探し”は犬にとって楽しい出来事。楽しいことをハンドラーとなる飼い主と一緒に行えば、お互いの絆も深まっていくものです。

ノーズワークは見た目には決して派手なドッグスポーツではありません。しかし耳を澄ませば、会場内からは“クンクンクンクン”と真剣ににおいを探す鼻の音が。それを聞くだけでもなんとも心地よい気分になることができました。そして、見学だけでとても勉強になりました。むしろまったくの初心者ならば、最初は見学から入った方がノーズワークの全体像が把握しやすく、愛犬と最初の一歩を踏み出しやすくなるのではないかとも思います。

犬たちの真剣なにおい嗅ぎ、飼い主さんのいい意味での緊張感、そしてお互いの連帯感を目の当たりにできた、とても貴重な機会となりました。皆さんもぜひ、愛犬と一緒にノーズワークにトライしてみてはいかがでしょう?