アシカのアシカ顔

文と写真:藤田りか子

アシカという名前をつけたのは海獣にちなんだからだ。アシカのように水が好きなレトリーバーに、という願いが込められている。レトリーバーは何と言っても歴史的にウォータードッグに属する。彼女のみならず私と暮らしてくれたレトリーバーたちは皆、海獣の名前をもらっている。カーリー・コーテッド・レトリーバーのラッコ、その前のカーリーはトド。

しかしアシカは我ながら良いネーミングとなったと思う。彼女はよく耳を後ろにう〜んと引き詰めるのだが、それをやると頭のてっぺんがツルリとなり、本当に海にいるアシカみたいな顔になる。コートもオイリーでツヤツヤしている。カーリーたちは巻き毛だから、こんなに海の哺乳類らしいルックスにはならなかった。ただし、泳ぎに関しては、みな名前に沿って生きている(きた)と思う。

特に人や犬に挨拶しにいく時の彼女のアシカ顔は顕著だ。ボディランゲージの使い方がとても上手ということだろう。これなら相手を怒らせることがない。「どんなタイプの子犬がいい?」とブリーダーに聞かれた時、

「尾を明るく振りながら耳を後ろによく引くっていう感じの子犬」

と希望を出していた。そして八匹の兄弟姉妹からこのアシカが我が家の犬に選ばれた。こういうタイプの性格はみんなと同調しようとするので付き合いやすい。謙虚で素直。しかし、アシカは決して臆病者ではない。仕事となるとものすごいパワーで片付ける。この点かなり犬々しい。こんな不思議なパーソナリティの組み合わせが実現するのは、やっぱりフィールド系ラブラドールという奇跡の犬種ならではと思う。そして「ブリーディング(人が意図的にある特性を選んで繁殖をする)」というものの「すごさ」を感じる時でもある。フィールド系のラブ、200年のブリーディングの歴史…。