「犬のため!」っていちいち謳わなくとも

文と写真:藤田りか子

犬連れ専用ホテルは日本の方がウワテ!

欧米のいくつかの国は「動物愛護(保護)先進国」と思われている。確かにそういう国はいくつかある。北欧もその一つだろう。そして私は北欧に住んでいるので「では一体どんな風に家屋などで犬仕様ががなされているのですか?」「犬のために一体どういう施設があるのですか」といった質問をよく受ける。動物の愛護が進んでいるからさぞかしペットショップなど日本に比べ物にならないぐらい豊富な商品揃えだと思う人も少なくない。

欧米と言っても北欧に限れば、「犬のためのナントカ」というコンセプトが日本人が思うほど社会に浸透していないのが本当のところだ。ペットショップの陳列も品揃えも犬グッズ商品アイデアも日本に比べると、バリエーションはかなりショボい。犬連れ専用のホテルだなんて、むしろ日本の方が進んでいるぐらいだ。マンションも「犬との入居可」といちいち記されていない。だから当然犬仕様に建てられたマンションも存在しない。もっとも犬の洗い場があるマンションができたら、これこそスウェーデンの飼い主は大喜びするだろう …。そして犬連れ専用のホテルだって、都市圏にあれば絶対にヒットすると思う。そういう面でスウェーデンはペット関係の商業的アイデアに乏しい。

犬飼い主の隔離を促すという意見も?

…と、こんな風に正直に北欧の状況を話すと、日本の人たちは一様に皆拍子抜けするものだ。今回「犬曰く」ウェブサイトの最初のブログとして「犬と共存するために」のセミナー記事が出たので、改めて「犬と共存している社会っていうのは実際どんな姿をしているのか」を考えていた。そんな時たまたまDog Actuallyの過去記事の中に、尾形さんの行ったインタビュー・ブログに面白いことが記されているのを発見した。「犬が隔離されない社会になって欲しい」– 千葉路子さんインタビュー(3)だ。

「犬が隔離されない社会になって欲しい」 - 千葉路子さんインタビュー (3)
文と写真:尾形聡子(本記事はdog actuallyにて2011年1月13日に初出したものを一部修正して公開しています) 野尻湖でのウォーター・...

是非一読されたい。インタビューを受ける千葉さんは、「犬専用」と謳う施設が増えたのはいいものの、かえって犬連れの人々が隔離される羽目に、とお話しされている。つまり社会での犬との共存がますます難しくなる、ということでもある。すごく良い点をついていると思う。

私たち日本人の癖でもあるのだが、犬との共存を切に願う人は一方で、何かが(例えば施設など)与えられればきっと今よりも犬との共存がうまくいくのではないか、と受け身に構える傾向が無きにしも非ず、だ。でも本当に共存を願うのであれば、やはり飼い主一人一人の積極的な努力に他ならないのではないか(どんな努力をすればいいのか?詳細については、尾形さんのセミナー記事で記しているので、参考にされたい)。犬連れを隔離してしまうのは、犬が行儀よく振る舞えない、と世間がレッテルを貼ってしまっていることにもよる。ならば行儀よく犬をしつければ、世間の偏見もいずれ変わる。「犬も社会の一員」だと考えたいのなら、これは飼い主として当然なすべきことだ。

そして忘れてはならないのは、犬の行儀のためにはやはり犬のウェルフェアはしっかり考慮されている必要もあるということ。精神的に満たされた犬であればこそ、良い行儀も伴う。

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