文:尾形聡子

[photo by BloodysAlice]
犬が私たちの感情に敏感な動物であることは、すでに多くの人が実感しているでしょう。それと同時に、「自分がこんな気分でいるから、犬にこういうふうに接してきてほしい」という望みどおりにはならないこともお分かりかと思います。犬が人の感情を読むことと、その感情に対して私たちが望む何かしらの行動を起こすかどうかは別次元にあるからです。
逆の場合はどうでしょうか。私たちは犬の感情や気分をどれほど正確に読めるものなのでしょう。言葉を交わして感情を確かめられない以上、犬のボティランゲージや息遣いなど、あらゆる部分を見てできる限り正確に状態を把握しようとしているはずです。
しかし、意外にも、私たちは犬そのものの行動をみているつもりが、周囲の環境や、出来事の文脈などを参照しているため、犬の感情判断は周囲の状況に強く引きずられてしまうことが以前の研究で示されています(詳しくは「犬の感情を読み違えてしまうのはなぜ?二つの大きな原因」を参照)。
たしかに、文脈や前後関係などを参考にして感情を推し量ろうとすることは、人間社会において円滑に関係性を保つために必要とされることですが、よほど気をつけない限り、意外にもそれは無意識に行っているものです。そのような日常の習慣が、犬の感情評価においても影響しているというのが上記記事の研究内容になります。
そこで問題になってくるのが、あらぬ擬人化や、「わかっている」という無意識的な確信によって、犬にとっては正確とはいえない理解が積み重なってしまう可能性です。そうした状態が続けば犬の福祉にも影響を及ぼしかねません。
この研究を行ったアメリカのアリゾナ州立大学の研究者らは、さらにその先を確かめるべく、非常に興味深い研究を行いました。今回紹介したい研究は、人が犬の感情を評価するときに影響するのは文脈以外にはないのか、もしかしたら、評価する人のそのときの気分によっても変化するかもしれないと考え、それを確かめようとしたものです。
そもそも人同士でも、相手の感情をどのように認識するかについては、年齢や性別、経験、文化的背景などのさまざまな要因が影響するため、その場にいる誰もが必ずしも同じになるわけではありません。感情を知覚するのは、とても複雑なことなのです。

