文と写真:藤田りか子

運動はたっぷり、BARF食べて筋肉ムキムキ女子、ミミチャン
犬曰くではすでに何度も紹介しているうちの犬、ミミチャンのビビり気質。本当にこの子で競技会に出れるのかな、と彼女が1歳になる前から心配をしていた。しかし、ノーズワークを早くから導入していたためか、競技会の雰囲気になれることもできたし、人や他の犬が右往左往している状況にも対処することができるようになった。ノーズワークで培った環境トレーニングをベースに、ガンドッグの競技の世界へも少しづつ足を踏み出していった。
もちろん、順調なことばかりではない。大失敗も経験している。他の犬に襲いかかろうとして、彼女はしばらくスウェーデンケネルクラブ傘下の競技参加を禁じられる処分を受けてしまった。この出来事については、記事「容認されない犬と人の行動 〜ドッグスポーツ競技会出場停止と犬の健全性と行動 その2」に詳しく触れている。
そして2025年のドッグスポーツシーズン。ミミチャンは4歳となり、いよいよスポーツドッグとしての脂が乗り始めたという感じ。しばらく競技会に出ず、地味に独りで練習をコツコツ重ねてきた。というのも、先の騒動以来、ミミチャンを連れてグループトレーニングに参加するのがどうしても憚られた。誰からも「来るな」と言われたわけではないけれど、どうも社会的プレッシャーを感じてしまい、参加する勇気がもてなかったのだ(この手の犬世界の社会的圧は日本もスウェーデンも同じ!)。
もうそろそろ競技会シーンに登場してもいいかな、と思った6月。ワーキングテストというガンドッグスポーツに出場。インターミディエートというクラス(国によってはノービスとも呼ばれている。難易度中間のクラス)にて、優勝をした(競技の様子はこちらから!)。その後も、いくつか競技会に出場し、いまいちの時もあれば、そこそこの時もあり。そしてついに、オーストリアで開催されたレトリーバーフェスティバルのワーキングテストで、40組中1位という快挙を達成した。
ミミチャンは、調子がいいととことん突き進んでくれる。ノーズワークでも、満点を取ればそれだけではなく、必ず1位か2位に入賞する。一方で、うまくいかないと本当に面白くない成績を残すのだが(これはひょっとすると、私自身のことがそのまま犬に反映されているのかもしれない)。ガンドッグでも、この傾向は同じだ。2度の優勝のみならず、どちらの機会においても「ジャッジチョイス」に選ばれたのだ。

背景にお城をひかえて、オーストリアのワーキングテストの受賞式。テスト開催場所はガンドッグ競技会らしくこの城の領地にて。 [Photo by Anna Tóth]
最初の頃は、先住犬のアシカほどスイスイと物事を理解するタイプではないし、しかも怖がり気質、正直なところ、「この子はたくさんのトレーニングを要するだろうな」と、あまり楽観も期待もしていなかった。ところが今では、むしろミミチャンはアシカの秀逸さを超える存在になりつつある。そして何より、私と彼女との信頼関係が以前にも増して強くなっているのがはっきりと感じられる。森を歩いていても、練習をしていても、ミミチャンは私に常に意識をむけてくれている。その確信が100%持てるのだ。そう、とても安心な気持ちで彼女とは過ごせる。ハラハラしなければならないのは、知らない人が突然向こうからやってきたとき。ミミチャンの怖がり虫が顔を出し、威嚇行動に出るときだ。

座っている犬がミミチャン。左端が新入りちびっこ、シャチ。ラッコも今年の11月で13歳を迎えた!ご長寿犬の仲間入り。
今年は新しい子犬・シャチもやって来て、ミミチャンへの注意が分散してしまうのではないかと心配した。しかし私と彼女のつながりはトレーニングを通してさらに深まっていった。それが実はとても嬉しい。というのも、アシカのときはミミチャンが生まれたことで、私との関係が少し削がれてしまったからだ。
「一生に一度の犬」はアシカだと思っていたのだが、もしかするとミミチャンこそがそうなのかもしれない(いや、新しい犬を迎えるたびにそう思うのかもしれないが!)。アシカのときのように何もかもスムーズに進んだわけではなく、むしろたくさんの壁を乗り越え(時には涙も流し!)、多くの時間とトレーニングを積み重ねた。その過程があって今の特別な関係があるのだろう。
今年は、競技会キャリアのまだ入り口というところ。来年はさらにステップアップを目指すつもりです!

