文:尾形聡子

[photo by Belogorodov]
犬ほど、同じ種のなかで姿形が異なる動物はほとんどありません。小型犬の中でも小さなチワワやヨークシャ・テリアがいる一方で、マスティフやグレート・デーンなどは80キロを超える個体もいます。細く長い脚で颯爽と駆け抜けることのできるサイトハウンド、穴に潜るのが得意な短い足のダックスフンド。被毛の長さ、毛質、耳の形、尾の巻き方、体長や気質まで、同じ動物とは思えないほど幅があります。
このような違いを「犬種」として分類するようになったのは、人が犬の繁殖を管理する時代になってからのことで、19世紀のイギリスではじまったドッグショー文化とともに犬種という概念が形成され、世界に広がっていきました。スタンダードに近づけるための繁殖が進むにつれ、姿の違いはさらに明確になり、時に極端すぎる特徴までもつくられてきました。
犬の多様な姿は近代以降の人為選択が生み出したものだと思われがちです。しかし先日発表された研究から、そのような見方をあらためる必要が示されました。犬の骨格、特に頭蓋骨を年代の異なる個体から集めて解析すると、犬という動物はもっとずっと早い段階から、すでに多様な姿への分かれ道に立っていた可能性が


