文:尾形聡子
犬が人の指差しジェスチャーの意味を理解できるのは、生まれ持った能力なのか、それとも、人と一緒に暮らすことで開眼する能力なのか?これまでの研究では、犬が人のジェスチャーを理解する能力は、人間の2歳児と同レベルであったという結果がしめされていましたが、今回紹介する研究報告は、犬が人の指差しの合図を理解することができるようになるのはいつからなのか?ということを検証したものです。
米国フロリダ大学の心理学研究チームは、犬はある一定の週齢になるまで人の指差しジェスチャーを理解していないということを、動物行動学の専門誌『Animal Behaviour』に発表しました。
普通の家庭に迎えられた、ジャーマン・シェパードやボーダー・コリー、ダックスフンド、ポインターなどのさまざまな犬種、9-24週齢の36頭の子犬を対象に実験が行われ、2つあるカップの片方にご褒美の食べ物を用意し、食べ物がある方のカップを指差した場合、犬が指差した方へ向かうかどうかということを調べたそうです。
その結果、週齢が上がるにつれて正解率は高まったものの、21週齢よりも若い子犬が人の指差しジェスチャーを理解する能力があるとは言えないことが分かったそうです。このことは、犬は、指差しジェスチャーを生まれながらにして理解する能力を持っている訳ではなく、21週齢を過ぎてそれを獲得するようになってくるということを示しています。
犬はどのようにして指差しジェスチャー理解能力を獲得していくかということは、この実験だけでは分からなかったため、21週齢よりも若い子犬を対象に、子犬が人とどのような関係でいるか、どのような頻度で接するか、といったことと、その後の子犬の指差しジェスチャー理解能力への影響について、さらなる研究が必要だと研究者たちは述べています。
(本記事はdog actuallyにて2010年1月11日に初出したものを一部修正して公開しています)