文:尾形聡子
[photo by Great Brut Here]
犬に発症する皮膚病というと膿皮症やアトピー性皮膚炎、細菌性皮膚炎などが一般的に知られていますが、脱毛症のひとつにアロペシアXという病気があります。ポメラニアンの飼い主の方ならば一度は見聞きしたことがあるのではないでしょうか。
ポメラニアンに好発するこの病気は1970年代に報告されて以来、偽クッシング症候群、成長ホルモン反応性脱毛症、去勢反応性脱毛症…などさまざまな名前で呼ばれてきました。なぜならこの脱毛症の発症メカニズムや遺伝的な要因が明確にわからずにいたためです。さらに、アロペシアXのアロペシアは脱毛症、Xは英語で謎や不確定な要素を意味する記号として使われるもので、アロペシアX(脱毛症X)という病名には「この脱毛症の原因はよくわかっていない」という意味合いがこめられています。最近ではアロペシアXだけでなく、「毛周期停止(症)」と呼ばれるようになってきています。この病名は、毛の成長周期(毛周期)に異常が生じ、毛周期が止まって脱毛してしまうという特徴を反映したものになります。
ちなみにイギリスではblack skin disease(ブラックスキン病)という言葉がよく使われています。これもまた症状のひとつである「脱毛した部分の皮膚に色素が沈着する」ことをあらわした呼び名です。日本では、ポメラニアン脱毛症、ポメ脱、ポメハゲなどとも言うそうで、とにかく色々な名前がついている病気なのですが、ここでは「アロペシアX」として表記していきます。
非炎症性の脱毛、アロペシアXとは
アロペシアXはポメラニアンに多く発症することは