文:北條美紀
[Photo by Jamie McCaffrey]
犬にしつけやトレーニングをすることが「かわいそう」だといって、敬遠する人が増えているという話を聞いた。それは、子どもの教育現場でもよく耳にする話だぞと思っていたら、あるところから「今だけ、カネだけ、自分だけ」という言葉があると教えられた。
「今だけ、カネだけ、自分だけ」という言葉は、東京大学の鈴木宜弘教授が書いた「食の戦争」に出てくる言葉で、3だけ主義と呼ばれている。「今だけ」というのは、今がよければ先々のことは考えず楽な手段を選ぶ、未来の成長の芽は摘む、問題を先送りするなどだ。「カネだけ」というのは、カネで買えるものはカネを払って手に入れればいい、自分の利益になるものにだけカネをかければいいし、利益にならならいものは捨てればいい、利益にならない努力は無駄だなどの考え方をいう。「自分だけ」というのは、自分だけが快適であればいい、他者の価値は自分の利害で判断する、自分以外の他者の将来など興味がない、といったところだ。
非常に合理的で個人主義で、今風といえるかもしれない。でも、この3だけ主義は、「犬にトレーニングを頑張らせるなんてかわいそう」、「子どものしつけって親の価値観の押し付けだよ」