文と写真:藤田りか子
【Photo by kultakarva】
犬の名前って、皆さんどうやってつけるのだろうか?犬に出会う前からもうすでに決めている?それとも、見た時の印象?
私は前者であり、一応ネーミングには「システム」を設けている。それは、かならず海の哺乳類の動物名をつかうこと。というわけで、我が家歴代の犬たちの名はトド、ラッコ、アシカ、そして次のまだ見ぬ犬には「シャチ」、とまるでシーワールドの面々。その理由は、犬たちがレトリーバーなので、何か水に関係した名前が欲しかったから。レトリーバーは水鳥を回収するウォータードッグがその始まりである。レトリーバーらしく水が大好きで泳ぎが上手な犬になってほしい。そんな願いを込めた。そして飼い主の願望通り、どの犬たちも水が大好き。泳ぐのが得意な犬になってくれた。
と、こんな風に名前の1つ1つに意味を持たせようとする私は意外に古風である。日本では子供に名前を付ける際に、「イメージ(慎ましく、清楚に、あるいは勇敢に、明るくなど)」「こんな性格になってほしい」「こんな人生を 歩んでほしい」というような、親の意図や願いを込めることが多いと聞く。ちなみに我が名の「りか子」というのは漢字で書くと「梨花子」になる。母が「梨の花の白さのように艷のある女性に」と願ったためだ。だがその半世紀後の姿は犬と走り回る、色気の「色」すら見当たらない「おばさん」であった。あああ。親が思う通りに人の子は育たない。
アシカにラッコ。両犬とも名前に負けない水好きな犬になった。
名前に何かしらのイメージや思いを込めるのは、世界の中でも日本独特の文化であるそうだ。確かにスウェーデンに住んでいるとそれに気がつく。なんといってもスウェーデン人の名前にはあまりバリエーションがない。女性であればたいていがマリアやエヴァ、男性であればラーシュやカール。宗教に出てくる聖人やら(マリアなど)神話に登場する神様の名前などから採用するのが一般的。バリエーションに限りがでてきてしまうのもそのためだろう。要は子供のネーミングに、日本ほど強い「願い」が込められていない。
さて、日本は犬のネーミングについてはどうだろう?アニコム損害保険の調べ(2018)では以下のような名前が日本ではもっともポピュラーということだ。
1 | ココ |
2 | モモ |
3 | マロン |
4 | ソラ |
5 | チョコ |
6 | モコ |
7 | ハナ |
8 | レオ |
9 | コタロウ |
10 | ハル |
みなさんの愛犬にも、ここに示された名前を持つ子がいるのでは?もしそうであれば、どういう思いでその名前をつけたのだろう?ベスト10にあがった名前はいずれも「可愛らしいもの」を想像させるネーミングであるに違いない。それは前述したように飼い主が愛犬に思い描く「イメージ」なのだろう。ココ、モモ、チョコ、マロン。甘いお菓子や丸くてふんわりしたイメージ。ちなみに筆者が日本に住んでいた頃(ほぼ30年前)は、これらベスト5に入っている名前は一般的ではなかったような気がする。一方でレオやハナには馴染みがある。今や日本における古典的な犬の名前になったのかもしれない。
では西洋は?名前にあまり意味を持たせないスウェーデンをはじめとする北欧4カ国とイギリスそしてアメリカの犬の名ベスト10を以下に紹介しよう。
スウェーデン | デンマーク | ノルウェー | フィンランド | アメリカ | イギリス | |
1 | モリー | モリー | ルーナ | ルーナ | ロッキー | ベラ |
2 | ベラ | ベラ | ベラ | アルマ | アニー | ルーナ |
3 | チャーリー | ルーナ | ミラ | ヒューゴ | ルーナ | ローラ |
4 | ドリス | チャーリー | モリー | オニ | ミロ | ポピー |
5 | シッゲ | ミッレ | レオ | スーロ | ベイリー | テディ |
6 | エルサ | ココ | マックス | ヘルタ | スカウト | バディ |
7 | サリー | バルダー | シーラ | ヘルミ | ロスコー | ルビー |
8 | ステラ | フレイア | バルダー | エリ | クーパー | ウィロー |
9 | アリス | アントン | ミロ | マルタ | コーダ | ミロ |
10 | ボッセ | フリーダ | ロニア | ケエルトゥ | ベントリー | デイジー |
国を超えて名前がパターン化しているのがわかる。ルーナ、ベラという名前がほぼどの国においても人気だ。日本では聞きなれない名前でもある。日本と比較して西洋の愛犬名の特徴は、多くが人に適用されうる名前でもあるということだ。日本の場合、ほとんどが「犬だけ用」の名前だったりする。あるいは名前に遊びをもたせているのかもしれない。チョコなんて名前を持つ人は、アダナとしてはありうるかもしれないが、まず存在しない。我が愛犬のアシカやラッコだっていい例だ。誰が海獣名を人の名前として使うだろう?名前に個々の特性(つまり犬であること)やイメージを投影しようとする気持ちは日本の犬のネーミングにも表されていた。ここでも日本の文化が反映されていたというわけである。
比較を西洋でも一部の国に絞っているが、もし、他にも犬の名前に面白い特徴を持つ国があれば、ぜひ犬曰くまでご一報を!もしかして他のアジア諸国では日本と同じような傾向をもつのでは?犬曰くのFacebookで情報をぜひシェアしてくださいね。
【参考文献】