文:藤田りか子
[Photo by Rikako Fujita]
二つのクリッカー・トレーニング・テクニック
クリッカーを使って犬をトレーニングする際に、クリッカーを鳴らしているにもかかわらず、毎回トリーツを与えない人をごくたま〜に見かける。あるいはクリッカーを連続して鳴らしながら「いいよ、いいよ、その調子で続けて!」と伝えはするものの、カチリの音ごとに報酬を犬に出さなかったりする。ノーズワークのトレーナーでも、そんな風にトレーニングしている人がいる。
クリッカー・トレーニングといえばカレン・プライアーが世界的に有名だが、彼女の本を通して学んだ私は「あれ、あんな風にクリッカーって使っていいのだっけ?」と疑問を感じたのを覚えている。が、クリッカーを使うトレーニング世界には今や「クリック&トリーツ」に並んで「クリック&ときどきトリーツ」というれっきとしたテクニックが存在するのを、つい最近ウィーン大学から発表された研究論文を通して知ることとなった。
「クリック&ときどきトリーツ法」のメリットはその派の信奉者によれば、いつトリーツがくるかわからないが故に 、動物はよりいっそうがんばってトレーナーがターゲットとしている行動を繰り返し行うようになる、とのことだ。だが「クリック&トリーツ」(=クリックの度にトリーツを与える方法)を支持するトレーナーはそれに真っ向から反対している。
というわけで「クリック&トリーツ」と「クリック&ときどきトリーツ」ではどちらが実際には学習効率としてよい方法なのかが今回の研究トピックスだ。ただしそれだけなら過去にも似たような調査が行われている。ウィーン大学の研究者がさらに踏み込んだのは、この二つのトレーニング・テクニックによって犬の感情がどう影響を受けるかについても考察を行った点なのだ。
これは部分強化法と同じ?
本題に入るまえに「強化スケジュール」についてちょっと触れておこう。クリッカーを鳴らしてもトリーツを与えたり与えなかったり、という方法を聞けば
「これってもしかして部分強化法のこと?」
と考えて