尾形聡子:プロフィール

東京は古い街並みの残る下町でスパニッシュ・ウォーター・ドッグのたろうとはなと暮らす。東京大学大学院農学生命科学研究科修士課程修了。ドッグライター。得意分野はサイエンス。

実家に暮らしていたときには、ほぼ犬がいる生活を送っていました。捨てられている犬を飼ったり、近所で生まれた犬をもらってきて飼っていたり。とはいえとりわけ特別なことはしておらず、大きな犬ならば当たり前だった外飼いをしていて、オスワリなどのしつけ以外、いわゆるトレーニングは受けたこともない、ごくごく一般的な犬のいる家庭でした。大人になってから実家を出て数年間、犬のいない暮らしをしていたときに、何かが欠けている、ああ犬不足なんだと感じている自分に気づきました。それに気づいてからは、どうしても犬と暮らしたいという気持ちを止めることはできませんでした。

ようやく始まった自分の犬たちとの暮らし。けれどもトレーニングの基礎すらよく知らない状態で野生児的な犬種でもあるタロウとハナを迎えたため、最初のうちは本やインターネットで色々調べながらトレーニングをする毎日を過ごしていました。それと同時に、いずれ繁殖をしたいという夢も抱いていました。スパニッシュ・ウォーター・ドッグという犬種を選んだのは、発症しやすい遺伝病がとても少なかったのも大きな理由のひとつだったのですが、2歳を過ぎて受けた股関節検査の結果が悪く、繁殖することを諦めざるを得ませんでした。期待に大きく胸を膨らませてとても楽しみにしていただけに、今でもその時の衝撃は忘れられません。

そんな気持ちを切り替えようと、股関節のよくない犬にも楽しめるスポーツ、ウォーターワークをやり始めることにしました。なんといってもウォーター・ドッグなので水は大好き、大好物。そこで初めてプロのトレーナーさんに基礎トレーニングから丁寧に教えてもらうことになりました。さらにはウォーターワークの場を通じて、ある方との出会いがきっかけとなり、ライターの道に進むことにもなりました。もしかしたら、犬の股関節に問題がなく繁殖をしていたら、ウォーターワークをすることもなく、私がライターになることもなかったかもしれません。トレーニングにしてもライティングにしても行き当たりばったり。そんな素人の私を常に近くにいて鍛えてくれた一番の立役者は他ならぬ、タロウとハナなのです。

このような経験をしてきたことからも、健康な犬が増えていって欲しいという強い願いがあります。日本の犬たちの健全性が向上するよう、これからもいろいろな情報を発信していきたいと思っています。

生まれと育ちだけでなく、今の暮らしもほとんどテリトリーが変わっていないのは、四季の移り変わりを肌で感じられる寺町を犬と散歩するのがとても心地いいから。昔よりも今の方がずっと地元が好きになっています。犬以外に好きなことは、料理とお酒と音楽(聴くのも、演奏するのも)。どれもゆるく楽しんでいます。

著書、翻訳(共著も含む)